雨月ではただいま六周年記念連続更新を実施中です。
タイトルは「ホーム・スイート・ホーム」
ファンタジー世界での恋愛小説です。
隣に書いた日付で純次更新していきます。
大切な貴方へ10の言葉 (「
COUNT TEN」様)
1.
ほんと、バカなんだから 更新日:11/16
2.
ハナシタクナイ 11/17
3.
誰にも言わないから 11/18
4.
そばにいて 11/19
5.
しょうがない人ね 11/20
6.
裏切ってもいいよ 11/21
7.
欲しいものは一つだけ 11/22
8.
おしまいにできない 11/23
9.
"許して"なんて言えないけど 11/24
10.
愛してる 11/25
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- 2009/11/25(水) |
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10. 愛してる
情けないことに僕は高熱を出して寝込んでしまった。麓の町から来てくれたお医者さんによると、かなり危険な状態だったそうだ。だから麓まで運ぶことができず、僕は家で寝込んでいた。
意識が戻って最初にレイラの無事を確認したら、そのお医者さんは呆れたように笑った。
「傷一つついていないよ。それよりも、自分の体を心配しなされ」
山賊まがいの強盗に襲われたことになっていた。シェリーさんはずっと看病してくれた。レイラも僕がいなくなるんじゃないかとすごく心配してずっと傍にいてくれた。
シェリーさんの記憶は戻らなかったのだろう。だから、今も僕のそばにいてくれる。だから言えない。彼が誰であるのか言えない。僕は卑怯だ。熱に浮かされまどろみの中で自己嫌悪に陥る。とてもとても卑怯だ。
それから何日か過ぎて、僕は何とか一人で立ち上がれるようになった。夜中に水が飲みたくなって台所へ向かう。けれどまだフラフラしているもんだから、ゴミ箱を蹴飛ばし倒してしまった。ため息をついて傷に障らないようゆっくりと膝をつく。
散らばったゴミを拾い集める。その手がふと止まった。ゴミの中に割れた朱塗りの櫛を見つけたからだ。
その櫛はシェリーさんの宝物だった。とても大切なもののような気がする、とずっとずっと大事にしていたものだ。それもそのはず、この櫛はアーチャーがシェリーさんにプレゼントしたものだ。アーチャー師団が東の国へ遠征した時、彼がシェリーさんに贈ったものだ。
アーチャーがシェリーさんに渡した唯一のプレゼント。それが真っ二つに割られてゴミの中に転がっている。
記憶をなくしても、アーチャーのことを忘れても、シェリーさんはこの櫛が大切だということは覚えていた。誤って割ってしまうわけがなく、また落とした程度で割れる品物でもない。誰かが故意に割ったのだ。
「もしかして……」
シェリーさんは思い出したのか? アーチャーを見て思い出したのか? 思い出してそれでも、僕のことを家族だと言ってくれたのか?
「どうしたの? あら大変」
物音に気づいたのか、起きてきたシェリーさんが膝をついてゴミを拾い集めゴミ箱へ入れていく。そして最後に僕の手の中にある櫛を取り上げて同じように入れた。
「割っちゃったの」
シェリーさんはこともなげに言う。
「あんなに大切にしてたのに?」
「うん。でも、もういらないからいいの」
ね、とシェリーさんは僕の顔を見て笑う。僕はシェリーさんを抱きしめた。強く強く抱きしめた。
「愛してる」
彼女の耳元でそう囁く。背中の傷に触らないように彼女もそっと抱きしめてくれた。
「わたしもよ」
右を向いても左を見ても、木ばっかりの山の中。僕と奥さんと娘ちゃんはそんな山小屋で暮らしている。
獣を狩って、木の実を獲って、余った分を麓の町へ売りに行って、そうやって僕らはのんびり暮らしているのだ。
- 2009/11/25(水) |
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9. "許して"なんて言えないけど
アーチャー師団は解散した。僕とシェリーさんは軍を辞めて一緒になり、生まれた子供に『レイラ』と名づけた。そして、この山へやってきた。
僕はアーチャーを見上げた。どん底だった僕に手を差し伸べてくれた彼。しかし、同じ手が今は剣を握り、切っ先は僕の目の前にある。
「俺は、シェリーがあの時何を言おうとしていたのか、それを聞くために戻ってきた」
アーチャーは顔をゆがめて続けた。
「あの魔獣の腹をかっ捌き、魔窟の中を這いずって帰ってきたんだ。そしたら、どうだ。俺の師団はなくなり、シェリーは……」
魔獣の巣窟に何年もいたのか。僕はゾッとする。明日の命も保障されないそんな場所で、アーチャーはシェリーさんに会うことだけ願って、それに耐えて帰還した。
けれど。
「シェリーさんは記憶を失ってる」
「黙れ」
喉に痛みが走る。薄く皮を斬られた。アーチャーは軽蔑した目で僕を見下ろしている。
「シェリーが記憶を失ったことはミッシェルから聞いた。あいつは『そってしておけ』と言ってたよ。だが、俺に会えば思い出す。シェリーは、俺に会えばきっと全てを思い出す」
そうかもしれない。シェリーさんはアーチャーのいない世界に耐えられず記憶を閉ざした。アーチャーが帰ってくれば記憶を閉ざす理由はない。
「思い出して、裏切り者のお前に愛想を尽かす。俺と同じようにな」
斬られるよりも痛い。僕はそう思った。彼にだけは言って欲しくなかった。僕は、彼にだけは『裏切り者』なんて言って欲しくなかった。シェリーさんも好きだったけど、アーチャーのことも本当に尊敬していたのだ。
斬れよ、と思った。一思いに斬って欲しかった。彼に裏切り者と罵られ、軽蔑されるぐらいなら。
「お父さん!」
甲高い声が響く。僕はビクリと震え声の方を見た。レイラがいた。レイラが家から外に出ている。そしてアーチャーを睨みつけている。
「お父さんをいじめないで!」
アーチャーの大剣の先が僕から外れた。
「お父さん?」
彼は乾いた声で言った。
「お前とシェリーの子供、か?」
暗い声だった。暗く暗く殺気をはらんでいた。僕はハッとして立ち上がる。アーチャーが地を蹴りレイラに向かって斬りかかる。同時に、僕も跳んだ。レイラとアーチャーの剣の間に割って入った。
レイラの悲鳴。彼女を抱え込むようにして転がった。痛みは後からやってくる。背中が熱い。僕が呻くと怯えきったレイラの目から涙が溢れ出した。大丈夫だよ、と僕は囁く。ごめんね、怖い思いをさせちゃったね。だけど絶対に大丈夫だからね、と。
腕の中にレイラを庇ったまま、僕はアーチャーを見上げた。血がベットリ付いた大剣を手にした彼の瞳の中には純粋な殺気があった。殺られると思った。
彼はレイラが僕とシェリーさんとの子供だと思っている。だから本当のことを知らせればレイラは助かる。僕は八つ裂きにされてもレイラは助かる。
「聞いてくれアーチャー。この子は……」
ギュッと腕の中でレイラが僕の服を掴んだ。お父さん、と震える声で呟く。
途端に僕は何も言えなくなってしまった。レイラを抱いたまま、何も言えなくなってしまったのだ。
この子は、誰の子だ?
「言いたいことはそれだけか?」
アーチャーの言葉に我に返るがもう遅い。剣が振り下ろされるのが見えて僕はレイラを守るように強く抱きしめた。
次の瞬間、飛んできた小石がアーチャーの手に当たって切っ先がブレた。僕の体のギリギリ真横の地面に剣が刺さる。
アーチャーは小石の飛んできた方向に目を向けた。僕は怯えきったレイラを抱えたまま彼から少しでも距離をあけようと地を這う。
「シェリー……」
掠れたアーチャーの声。僕もアーチャーと同じところを見た。槍を手にしたシェリーさんが立っていた。彼女はゆっくりとこちらに近づいてくる。
記憶は戻ったのだろうか。僕はボンヤリとそんなことを思った。きっと戻っただろう。アーチャーに会ったのだから。アーチャーが迎えに来たのだから。そして、レイラも含めた三人で幸せに暮らすんだ。それが正しいことなのだ。
シェリーさんが傍にやってきて僕を見下ろした。許してなんて言えない。だから、僕はただ彼女を見上げて思う。
嘘をついてごめんね。
ゆっくりとシェリーさんはアーチャーを見た。そして言った。
「わたしの家族に何をするの?」
僕は言葉の意味がわからなかった。それはアーチャーも同じだった。
「シェリー?」
動揺したアーチャーの声。名を呼ばれた返事の代わりにシェリーさんは槍を向けた。
「俺は……俺が誰だかわからないのか?」
「わたしの家族を傷つける人は誰であろうと許さないわ」
アーチャーは目を見張った。更に何かを言い募ろうとしたが言葉にならなかった。シェリーさんを見て、僕を見て、そしてシェリーさんを見た。
「俺はただお前に会いたくて、そのためだけに戻ってきたというのに」
ギリリと歯を鳴らし、アーチャーは地に刺さった大剣を力任せに引き抜いてシェリーさんに飛びかかる。シェリーさんは落ち着いた様子でそれを受け流す。二度、三度、四度。鋭い金属音がして、シェリーさんの槍が跳ね飛んだ。
シェリーさんは動かない。後ろに僕らがいるからだ。アーチャーも動かない。彼女の得物はもうないというのに。
「……俺は」
一つ大きく息を吐き、アーチャーはゆっくりと構えを解いた。
「お前を傷つけることだけはしたくない。たとえ、お前が俺のことを忘れていようとも」
大剣を腰に納め、アーチャーは踵を返した。一度も振り返らず、ゆっくりと歩みを進め去っていく。やがて彼の姿が見えなくなり、シェリーさんの体から力が抜けた。そして、さっきまでの落ち着き振りが嘘のように、慌てた様子で僕の隣に膝をつく。
「ルイス! ルイス! 大丈夫?」
「僕は平気。だから、レイラを……」
そう言いながら僕の意識は遠くなっていく。霞が濃くなるその向こう側でシェリーさんとレイラが僕を呼んでいた。
- 2009/11/24(火) |
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8. おしまいにできない
そして、運命の日がやってくる。
その日は朝からシェリーさんの様子がおかしかった。うろうろとアーチャーの近くを声をかけるでもなくうろついていた。意を決した様子でアーチャーに声をかけたのは昼前になってからだ。
「団長、お話があります」
「ん? 何だ?」
「わたし……」
その時、魔獣が見つかったと連絡が入った。司令部内に途端に慌しくなる。
「シェリー、話は帰ってから聞く。ルイス、留守を頼んだぞ」
「はい」
その日の任務にシェリーさんは同行しなかった。女医のミッシェルがドクターストップをかけたのだ。
物憂げな表情のシェリーさんをミッシェルがなぐさめている。それを横目に僕は戻ってくる伝令から様子を伝え聞き、また伝令を放って実行部隊と連絡を取り合っていた。
息せき切った伝令が血まみれで戻ってきたのは、団長たちが司令部を出発してから一時間後。
「魔獣と遭遇! 実行部隊が……壊滅しました」
僕はシェリーさんを見た。シェリーさんの目は大きく見開かれ、体がわなわなと震えていた。
「団長は……」
「アーチャー団長も、魔獣に殺されました」
その知らせを聞いた途端、シェリーさんは倒れた。僕は彼女を別の団員に任せて現場へ駆けつけた。
凄惨な光景が広がっていた。辺りに漂うのは仲間の血の臭い。アーチャーの姿を探したが、地に倒れ伏すその中に彼はいなかった。
団長は魔物に食われた。生き残ったものがそう教えてくれた。
魔獣はそのまま森の奥へ帰っていったそうだ。怪我人だらけになってしまった実行部隊を取りまとめ、司令部へ戻ってからが大変だった。アーチャーがいなくなり、シェリーさんも倒れ、僕が実質的にアーチャー師団の責任者になってしまったのだ。動揺する皆を必死で宥めるも、古参というだけで副団長でも何でもない僕の指示に従うことを良しとしない連中は大勢いた。
頼みの綱のシェリーさんが意識を取り戻したのは三日後だった。本部から「責任者をこちらへよこせ」と言われて頭を抱えていた頃だ。僕はホッとしてシェリーさんの寝ている部屋へ向かった。部屋の前ではミッシェルが怖い顔をして立っていた。
「シェリーは記憶を失っているわ」
何のことかわからずに僕は聞き返した。ミッシェルは深刻な顔で首を横に振った。
「私たちのことは覚えているようだけど、アーチャーのことを完全に忘れてる。多分、アーチャーがいないことに耐えられないのね。そして、悪いことに、シェリーのお腹にはアーチャーの子供がいる」
ひゅっと僕の喉が鳴った。目の前がクラリとした。
「このことは、私とシェリーしか知らない。アーチャーですら知らなかったはずよ」
「シェリーさんの様子がおかしかったのは、それで?」
「ええ。そして、シェリーはそのことも忘れてる」
ミッシェルはため息をついた。
「今、アーチャーのことを無理に思い出させたら、シェリーは壊れて終わっちゃうわ。私の権限でここから強制的に隔離して、アーチャーを忘れたままでいさせることは可能だけど、お腹の子をどうするかよね……」
とりあえず彼女に会わせてくれ、と混乱した頭のまま僕は部屋に入った。ベットの上で横になっていたシェリーさんはこちらを見て笑う。
「ルイス。ごめんね、心配かけて」
ああ、と僕は思った。本当に彼女はアーチャーのことを忘れてしまったのか。シェリーさんはアーチャーを失って笑えるはずがないのだ。あんなに好き合っていた相手だったのだから。
僕は目まぐるしく頭を回転させた。そして結論を出した。
シンプルな結論だ。このまま、おしまいにはできない。
「具合はどう? シェリーさん」
普段よりも気安い喋り方。僕は気づかれないよう唾を飲み込んだ。柄にもなく緊張していた。落ち着け、と胸の内で自分を叱咤する。
「たまに頭痛がするけれど大丈夫よ。それよりも、その言葉遣い、副団長に向かって……」
副団長。自らが発した言葉を驚いたように復唱してシェリーさんは首をかしげる。
「あたしが、副団長……? じゃあ団長は……」
彼女の顔がみるみる青くなり、痛い、と呟いて頭を押さえる。僕はシェリーさんの手をとって頭を優しく撫でた。
「ミッシェルは何て?」
「頭を打って混乱してるって。ねえ、ルイス。あたし、何か大切なことを忘れている気がするの」
「うん、シェリーさんは大事なことを忘れてるみたいだね」
「何を? あたしは何を忘れてるの?」
縋るような視線を受け止め、彼女に笑いかけた。
「僕たちが恋人同士だってことだよ」
さあ、この嘘を君に捧げよう。
- 2009/11/23(月) |
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7. 欲しいものは一つだけ
物心ついた頃、僕は親に売り飛ばされた。上にも下にも兄弟がいて、家はとても貧乏だったからだ。頭も顔もそこそこよかった僕は、小さな村から首都に売られて軍属になった。特殊な施設で訓練されて、十歳の頃から他国に潜入して仕事をしていた。要するに、スパイ活動をしていたのだ。
僕の口から飛び出す言葉は全て嘘だったし、僕と周りの関係も全て嘘だった。信じられるものは最初に叩き込まれた国への愛国心だけ。自国のためにと、得た情報を巧みに操って小さな国を一つ滅ぼしたことさえあった。それなのに優秀すぎた僕は二重スパイの疑いをかけられた。十八歳の頃、監禁されて長い時間取調べを受け、疑いは晴れたが僕が信じていたものは根底から崩れた。
そんな時、僕の前に現れたのがアーチャーだった。仕事を拒否して腐っていた僕に、「うちの師団に来ないか?」と言ってくれた。当時からすでに『暁の勇者』と敬われ恐れられていた彼とは、昔一度だけ仕事をした顔見知り程度の間柄だった。だから、信じることだできなくて僕は反発した。
「嘘つき者の僕を引き入れるって? 正気?」
「お前は必要のない嘘はつかないだろ」
三日悩んで、僕は彼の部下になることを申し出た。
「これからは君に従うよ、アーチャー。僕の命を君に預けよう」
当時、彼が師団長に任命されたチームはまだ出来立てのほやほやだった。複雑な軍組織とは一線を画す機動性に優れた一団、という触れ込みだが、作られたばかりのこの団にいたのは、とんでもなく強い女性の槍遣い、シェリーさんだけだった。
「初めまして」
爽やかに挨拶した僕をさらりと無視して彼女はアーチャーに抗議した。
「こんな軟弱そうな男を入れるんですか?」
「ルイスの情報戦術は大したもんだぞ。他の所に引っ張られる前に確保しとかないと」
「情報戦術なんかより、もっと戦力を増強すべきです」
「戦力?」
アーチャーは首をかしげて言う。
「そんなの俺とお前がいれば十分だろ」
シェリーさんは耳まで真っ赤になった。それで僕は気づいたんだ。ああこの人はアーチャーのことが好きなんだなって。
それから三人で、少しずつ実績を積み重ねていった。戦うのはもっぱら二人で、僕は常に後方支援。何せあの二人の戦闘能力といったらとんでもなかったからね。
仲間も徐々に増えていった。女医のミッシェル、弓使いのギラン、火薬に詳しいレーン……。
うちの団の人数が徐々に増えていっても、アーチャーは変わらなかった。常に戦闘の最前線に立って『暁の勇者』の力を遺憾なく発揮していた。主要な面子はアーチャーにスカウトされて集まったけれど、国から与えられた雑兵たちはアーチャーのカリスマ性だけでは統率できない。そんな組織を実質的に動かしていたのは副団長のシェリーさんだった。彼女はアーチャーとは違ったカリスマで皆をまとめ、引っ張っていたのだ。
「大変ですよね、シェリーさんは」
本来ならば団長がやるべきことを文句一つ言うことなく片付ける。そんな彼女は団の全員から慕われ愛されていた。
「ルイスも手伝ってくれているじゃない」
時に深夜まで続く雑務を彼女一人に任せるわけにいかなくて、僕もよく手伝っていた。こまごまとした作業はお手の物だ。
「最初ルイスに会った時は、どうしてこんな人を連れてきたんだろう、って思ったんだけど、団長のなさることは正しかったわね」
「雑用係ってことですか? 団長にもやらせればいいのに」
そう言うといつもシェリーさんは笑って答えるのだ。
「団長が戦いやすいように組織を整えるのが副団長であるわたしの仕事よ」
「ノロケですか」
「そうかも」
実際、団長と副団長の仲は上手くいっていた。それは組織上のことだけでなく、私生活も然り。
二人の一番の部下として、また、友人として、互いのノロケは何度か聞かされていた。だからこそ僕は自分の中にある感情をポーカーフェイスで押し殺し続けていた。
「手伝ってくれてありがとう、ルイス」
仕事を終えて別れる時、僕にだけ向けられるその笑顔。あの時の僕にとっては欲しいものはこの一つだけ。
その頃、僕らは召喚魔獣の討伐で北の辺境にいた。森の中に即席の司令部を作ってそこに巣食う魔獣たちを探している最中だった。
- 2009/11/22(日) |
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